44軒目。
年末というのに、北口のアーケード、自転車置き場の横、1000円床屋との間にバーが新開店した。オーセンティック・バーだ。場所が場所だけに入りにくいわけではない。
じゃあ、なんで「入りにくい店」に挙げるかというと。
すぐ前までやっていた寿司屋が、驚くべき店だったのだ(もっとも、絶賛する方がいたのでワタシは興味を持ち、行ったのであり、支持する方がおられることは否定しないので、お間違えなきよう)。
まずエントランスが自動ドアかつゴージャスで、内にも玄関みたいなのがあり、二重になっていた。カウンターは白木だが、板場にはごちゃごちゃと物が置いてある。
ビールに続けて焼酎水割りを頼むと、作務衣を着た主人が「3杯飲んで」とピッチャーが出てきた。泡の着いたグラスはそのまま。寿司はいきなりトロ6カンから始まった。続いて飛騨牛(?)、蛍烏賊、子持ち昆布と居酒屋メニューが続く。さらに大きな巻物9、臭いのするトリガイ3。おかしな組み合わせの「お任せ」だ。
さらにフシギだったのがその後の会話。「お客さん、いい体してるね。私の知り合いは水泳選手ですよ」。ワタシ「?」
「何年生まれ?」「56年です」「ええ~!(横にいた)息子さん、14歳で作ったの?」(1956年を昭和56年と勘違いしたらしい)
「自分で見えますか?」「(何のこと)?」「鼻の横の黒子。私と同じね」。「・・・・」。「お客さん、きっと泣き虫でしょ?私は泣かないけどね」。なんだかおかしな話しかけ方である。
いちいち返答に窮してワタシは黙っていたが、携帯が鳴ったので外に出た間に、息子には「お父さん、無口だね」と言って、息子は絶句していたらしい。
お勘定を頼むと、「はーい。こちらはお茶はなしね」とワタシがお茶を飲まないと勝手に決めた。
あまりに面白かったのであちこちで吹聴していたら、「どうしても行ってみたい」という女性がいた。「止めた方がいいと思うよ」と止めたが、「お金はともかく、そんなことを言われてみたい」と仰る。まあ、それくらいのインパクトだったのでした。
前振りが長すぎてスミマセン(「蛍」さんにも)。対照的にこの「蛍」、ずいぶんと入りやすい。なにしろ店外にチラシやメニューが置いてある。これなら安心だ。
本日はジュンちゃんとデート。相方の彼氏は遅れてくるそうな。
メニューでいきなり惹かれるのが、「12月のカクテルコース(4種類)」とあること。カクテルでコース?言われてみると「なるほど」だが、思いつかなかった。なかなか気を惹くアイデアじゃないか。
ブルターニュ産有機栽培りんご100%のスパークリングワイン
冬の味覚 みかんジントニック
バラとクランベリーのカクテル
ジンジャーシナモンのホットワイン
これで3000円なのだそうだ。女性連れでBar慣れしていない男性にも、安心できるな。
入ると、なんと男性2人、女性1人のバーテン3人体勢。やる気満々である。
あらら、以前の白木のカウンターは黒に塗ってある。店長らしい男性に尋ねると、「いや~、驚きの店内でした。トイレにも度肝を抜かれましたが、それだけ残して、あとは全面改装で・・」。やっぱり内装には驚いたのね。「お客さん、泣き虫でしょ」も聞いてもらいたかったなぁ。
女性にジンジャーハイボールを頼むと、カボチャのムースが出てきた。突き出しということらしいが、温かくてなかなかうまい。メニューはパスタとかだけでなく「ささみの味噌漬け」「ラム肉のパイ」とか書いてあるし、本格的。
4人掛けの卓が2つあり、カウンターは8人は座れる。先客はカウンターに女性1人、卓も1組。
次ぎにブランデーを頼むと、「カイシャ」という会社のシェリーブランデーを薦められた。スペインの銘柄らしい。常温で、チェイサーを頼む。チョコみたいな癖のあるフレイバー。
シェリーを勧められるが、イチゴのブランデーカクテル、果肉ありで注文、これもなかなか美味しい。
バーテンの女性をどこかで見かけたことがあるのでそう言うと、「私、他のお客さんにもそう言われたんです」と答える。「阿佐ヶ谷には似た女性バーテンがいるのかしら?」
そんなこんなで話し込むと、ここの本店は滝野川の板橋寄りにあり、その支店とのこと。
この女性は、某著名私大を出ており、心理学専攻だったが卒論にはフーコーの「生の歴史」を英語で読んだという。かな~り知的である。
なんでバーテンを目指したかは、聞き忘れた。聞きたい方は、どうぞ。どんどん話しかけてくれますよ。
ちなみにお代は2人合わせて締めて3000円也。安すぎて計算間違いじゃないかとも思うが、どうでしょう?
ある日、久しぶりにセンセイからメールをいただいた。行ってみたいお店があるとのこと。待ち合わせは駅前パサージュと聞き、ピンときた。最近オープンしたあのお店に違いない。実はオープン前から気になっており、きっとこのお店もこのシリーズの対象店となるに違いないと思っていたのだ。フフフ、心づもりはできておりますぞ。
まずは、外観。木のスリットが入っており、中の様子が少しだけ覗き見える。表は前店舗をそのまま引き継いだ形ではあるが、阿佐ヶ谷駅前にしてはシャレオツ感は高い。
店内に入る前に、店の前に置いてあるメニューを拝見。フルーツカクテル各種(750円~)、各スタッフのお気に入りカクテルが挙げられてある。ふむふむ、カクテル推しのちゃんとした系のバーなのか。
あとはオリーブのハーブマリネ380円のちょいとつまむ系からタコライス790円、ラム肉のシェパーズパイ780円など、お腹も満たしてくれそうである。余談だが、私は普段、知らないお店に入る時は生ビールの種類と値段(あとサラダ)を見て、お店を想像するのだが、ここは表のメニューにはビールが表記されていなかった。
店内に入ると意外に広い。入ってすぐの左手にある唯一のテーブル席にはお客様がおられ、L字型の長いカウンターにも3名ほどの先客がいらっしゃった。
スタッフに案内され、私とセンセイはL字の横棒の部分に落ち着くことに。藤でできたアームチェアーはゆったりとしており、腰のクッションが心地よい。なるほど、座席間が広くとられているので、店全体がゆったりと感じられるわけだ。
オーク調のカウンターに間接照明。落ち着いた雰囲気の中、白いシャツに黒いベスト、まさにバーテンダーという格好をしたスタッフ(30代?)が3名。
私たちの目の前にいる唯一の女性バーテンダーにお勧めされたジンジャーワインハイボールなるものを、まずは注文。グラスの底にレモンが入っている。少し甘苦い。丁寧に作られており美味しかったが、私にはジンジャーハイボールとの違いが分からなかった。まだまだ修行が足りないようだ。
飲み進めていると、南瓜のムースが小皿で登場。洒落た店は、突き出しもお洒落である。センセイはさっさと2杯目に気が移り、シェリー酒について相談などしてらっしゃる様子。さすが、場末から盛り場まで飲み慣れたお方だ。適応力が半端ない。
対して私は小心者なので、2杯目はグラスワインを注文。月毎にグラスワインの種類を変えていると仰っていたと思う。あるいは週毎だったかもしれない。赤でシラー系が好みと伝え、いただく。美味しい。赤ワイン情報は失念。
その後、センセイは苺のフルーツカクテルを頼んだりしつつ、このお店が入る前にあった前店舗の話で盛り上がる。以前あった檜と大理石のカウンターテーブルは撤去したとのこと。お店の方曰く、一枚板のかなり立派なものだったが雰囲気が合わなかったそうだ。残念、見てみたかった。
かなりモダンな造りのお店だったらしい。すると、お手洗いは変わってないそうだから見ておいでとセンセイに言われ、帰る前にお手洗いを拝借。
お~。コズミック!都会のクラブのお手洗いのようだ。行ったことないけど。
都内で既に2店舗出されているとのことで、安定感のあるお店という印象。しかも阿佐ヶ谷価格でコスパ良し。カウンターで静かにゆっくり飲みたいときには特にオススメ。
(ジュン30代会社員)
他の日にも「蛍」を訪ねたので、報告したい。マホガニーの椅子にどっぷりと腰を据えると、薄暗い室内で心が落ち着く。
本日はバーテン男子お二人。先客は1人だが、ぼちぼちとワタシの後にも入ってくる、みなさん、気になるのかな?
カクテルに基本的に力を入れているということなので、「柚子のジントニック」をいただこう。和風の柑橘にジン、という組み合わせが乙。
本日の突き出しはゴボウのムース。温かい。気が利いている。
「「蛍」というのは、街を薄暗く照らしたいという意味で・・」と店長。
「でもこのアーケードは阿佐ヶ谷でもっとも明るいんでは?」とワタシが尋ねると、
「ですのでこの店内を暗くしてます」とのこと。
ともあれ、温かく落ち着くのは間違いない。
フルーツのカクテルも得意というので、次は「とちおとめのモスコミュール」。
これは果肉が残って、なかなかにうまい。ワタシは酸っぱい系が好きなのだ。
これだけバーが乱立しているだけに、阿佐ヶ谷で千客万来、というわけにはいかないかもしれないが、カクテルに特化して、年中無休、5時から3時までと、やる気も伝わってくる。毎月のメニュー交替も続けて、ぜひ奮闘していただきたいものだ。深夜はまったりして帰る気がなくなるかも。
ちなみに当店、数回来てみて、いつも女性の1人客が数名いるのに気づく。仕事の出来そうな方々。女性もバリバリ仕事して、プチ女王様気分の味わえるこというbarに寄ってリフレッシュするのでしょうね。
(センセイ)
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