阿佐ヶ谷の入りにくい店を訪ねて56軒目。
銀杏小路の『越川』である。
ここは入りにくいとは正反対の店、安く魚介を食べさせる居酒屋として、阿佐ヶ谷でももっとも流行っている店の一軒だろう。駅南口を線路沿いに荻窪に向かったところにある飲み屋横丁「銀杏小路」では、「豚八戒」の向かいに位置し、ともに満員が常態となっている。
刺身の五点盛りにもそれぞれ肝を溶くなどつけ醤油が異なった『おおはま』が鎌倉に移転したあと、刺身を食べたくなるとここに来る。以前ホヤを頼んだら新鮮で、それからだ。
じゃ、なんでここが「入りにくい」かって?理由は豚八戒と同じ。予約しないと入れないことが多くなっているから。
先日、30代の女性編集者Kさんと『越川』について喋っていたら、「若いカップルなんかが来やがって。お陰で断られることが増えてきた」と憤慨していた。カップルで来ていることの方に憤慨してるんじゃないか?とも邪推するが、ともあれ最近は混んでいて入りにくいのは事実。
で、その腹立つ「若いカップル」の女性の方じゃないかと思われるアリちゃんを誘ってみる。幸い夜は時間が空いてるとのことで、越川にて待ち合わせ。
「年末はノロで死んでたんです~」と、まだ本調子ではない様子。でも刺身は食べたいとのことで、牡蠣と刺し盛りを。黒板にはどれも美味しそうなメニューばかり。焼き白子と牡蠣を追加する。どんどん出てくる。
赤烏賊、平目、シメサバで、全部厚切りだ。もう少し包丁の切断部がスッキリしていたら満点なんだが、まあそこが大衆居酒屋というジャンルか。
店内はウッディーで、木造りの魚やいろんな絵が所狭しと飾ってある。そのうえテレビに掛け時計、黒板、メニュー紙が壁を覆う。2人卓が3つ、4人掛けのカウンターと、店外にも2人掛け。本日は寒いがものともせず座るカップルがいる。
注文を取りに来た男性は堂々としているが、店主はカウンター内の男性らしい。それに奥で包丁を握る男性もいて、計3人。この狭さで3人とは、流行っているだけある。
お客はKさんが言うように若い世代が目立つ訳ではない。むしろ、一律に括れないほど多様な世代が刺身を楽しみ飲んでいる。しっとりとはしないので、女性を口説くには向いていないな。むしろ出来上がったカップルや同性同士に向いているか。
引き戸を開けた新規の客は断られている。それでも次々と様子をうかがいに引き戸が開く。噂が噂呼んで流行っているのだろう。
「お客様はそろそろ・・」と急かされた。そう、8時予約のお客が来るまで、1時間だけ入れてもらったのだ。これで鯛の子やメバルの煮つけなんかがあるようなら、ワタシ的には最高の居酒屋なんだがな(中野の「第一力酒蔵」みたいな)。そうしたらもっとも混んじゃうか。
(センセイ)
阿佐ヶ谷駅南口の右手側、やや分かりにくいところにある「いちょう小路」
阿佐ヶ谷にはスターロード、一番街など多くの飲み屋街があるが、「いちょう小路」はまた独特だ。池袋の美久仁小路に近い雰囲気を感じる。
そんないちょう小路にあるのがここ「越川」。
何度か訪れているので入りづらいという感覚は無くなってしまったが、初見には中々レベルの高い外観。そもそもいちょう小路自体が結構怪しいので難易度高めかもしれない。
にもかかわらず越川はいつもほぼ満席状態。これは阿佐ヶ谷の土地柄・人柄によるものなのか…いや、私の知人も越川のためにわざわざ遠征してくるのだから、相当の魅力があるお店なのだ。
店内に空席は1つのみ。店の方に伺うと「20時までなら」とのお返事。現在19時。若干悩んだがここは1時間一本勝負することに。
各卓上にレギュラーメニューのお品書きもあるが、店の隅に掲げてある黒板が本日のおすすめ。ちなみに黒板は奥にあるので最初に写真を撮っておくと便利だしちょっと通っぽい気分になれる。魚中心のメニューが豊富で悩ましいが、まずはビールと焼き白子を注文。
センセイも到着し、黒板メニューより赤イカや〆鯖を注文すると、盛刺ならすべて入っているとのことなのでそちらに。単品で生牡蠣もオーダー。最近ノロを発症したが、そんなことで牡蠣愛が冷めることはない。
注文を終え改めて店内を見渡すと、メニューの張り紙だけでなく油絵や水彩画なども色々飾ってある。お店の方の趣味なのだろうか。雑多な雰囲気にどれも違和感なく溶け込んでいる。というかセンセイに言われるまで飾ってあることに気付かなかった。
焼き白子が到着。アルミホイルに包まれた白子は適度に焼き目がついていて、少し醤油を付けて食べるとトロっとした食感がたまらない。ポン酢もいいけどやはり冬は焼き白子だなぁ。
盛刺もどれも身が厚く食べごたえがある。が、ふと外を見るとこれまた大ぶりな切り身が贅沢に乗った鍋が!!!何鍋だったのだろう…時間があれば食べたかった…
視線を店内に戻すと、先日訪問した際もいた女性2人組が今宵も同じ席に。常連さんなのですね。店内は活気があり決して静かではないのだが、ここにくるとなぜか落ち着くので通いたい気持ちがよくわかる。
常連さんからすると、これ以上新規の客が増えるのはウェルカムではないのかもしれないが、新鮮な魚料理とこの独特な雰囲気が一度訪れた人を虜にしてしまう、そんな店なのでしょう。
(30代 お酒大好き女性)
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