二階の店というのは、やはり入りにくい。メニューや雰囲気を書いたボードでも出ていればともかく、看板だけだとどんな店なのか分からないから。家でも飲める酒をわざわざ外飲みするのは気分をよくしたいからで、二階まで階段を上って躊躇したり引き返したりするのも気鬱ではある。
スターロードを歩いていたら、「bar night train」という看板を上空に見つけた。線路側だとラーメン『天勝』のビル、その裏側(フィットネスクラブ側)が入り口。バーだと謳っているんだからカラオケスナックじゃあないんだろうな。新開店だろうか。しかしそれ以外の情報はない。オーセンティックなバーか、若者寄りのバーか、音楽専門店なのか。
階段を上がると、ノーチャージ500円よりとある。古き良きアメリカ的なポスター。扉の前に立つと、ガラス越しに中が見える。いやむしろ入りやすい店かな。まあ、「ビル一階階段には入りにくい店」ということで、「阿佐谷88カ所」に認定させて下さい。
で、ドアを開ける。赤と黄色っぽいライトが染みたかのような店内。カウンターがあり、6席。あと、3人卓、4人卓がある。
カウンター内には短髪にあごひげのにこやかな男性。棚には右から左まで一段、LPがずらっと立てられている。500枚とかかな?
正面にモニターで映画が流れている。大きな鏡がかかっていて店内が広く見える。横には現在流れている曲のLPが。女性コーラスronettes のベスト盤、1曲目は懐かしい「be my baby」。
壁には小綺麗に懐かしい感じの額がかかっている、サッチモの笑顔、ソウルバーってことだろうか。トイレにはフロリダの三角フラッグ。アメリカ旅行土産か?
飲み物はバーボンやウィスキー等、標準的なものが並んでいる。生ビールはレーベンブロイ。特別なのもあるらしい。「クリームソーダ」「桜のカクテル」各600円、とある。ワタシはジャックダニエルズをロックで注文。大きな球のような氷が入っている。そういえばマスターはさっきからずっと掌の氷をアイスピックでつついていたな。
先客は中年女性が一人。「これ初めて飲んだ、おいしいわ~」「カルバドスは林檎のブランデーなんです。これは『ブラー』」なんて話をしている。
「ヨリちゃん、どうやってレコード集めたのー?」「オールジャンルでこつこつ集めてるんですよ。『rare』は店じまいらしいですね」店主はヨリちゃんと呼ばれているらしい。中古店で買い集めるのか。
女性は私たちにも話しかけてくる。「ヨリちゃんが高円寺で歌っていた時からのつきあいなのよ~。ヨリちゃん、暖かい小春日和のような声なの」。あら、歌手の方が店開きしたのかな。確かににこにこして、優しそうな店主。阿佐谷のバーとあれば一癖も二癖もある濃い~い店、濃い~い店主が大半だが、いっぷくの清涼剤というか。
しかし、濃い~のは、むしろお客である。「三階は中国マッサージなんです、ごく普通の」と穏やかに言う店主に向かって、「何言ってんのよ、ヨリちゃんは疑わないんだから。きっとエッチよ。私は整体師なんだから分かる」
この女性は、話が面白い。「私は小学校から私立女子校だからお嬢様と思われるけど、父は無一文で上京して、日本一ミキサー車売った人なのよ」。たたき上げで一代で財をなした方の娘さんということか。ずらずら続く身の上話を肴に、バーボンを飲む。
3月に開店したばかり、この女性はすでに5回目の来店だとか。常連さんもついているらしい。ご多幸を祈りつつ、我々は次の巡礼に向け席を立った。二人でウィスキー四杯、2200円だった。明朗会計也。(センセイ)
ゴールデンウィークなのか、閉まっているお店も多く、人もまばらな夜の阿佐ヶ谷。普通に話しているだけなのに、センセイと僕の声がスターロードに声が響く。
この声は、まだ扉を開けていない、いや、開けれなさそうなお店に届くのだろうか?なんて繊細な感じはみじんも思わず、上空を見上げると、黄色く輝くやたらアピール度が高い看板を発見。目の悪い僕には「Bar Night Train」と書いてある事も見えず、色彩判断に頼る。
店の入り口がマンションっぽい、二階、何系のお店か分かりにくい。と言う自分3拍子が揃いましたので、入店決定。
階段を上がる途中、ラーメン屋「天勝」の裏口が少し開いていて、中々いい感じ。ナイスな雑居感。
それにしても二階と言う立地は本当に手強い気がする。二階と言うだけで入りにくいのは確かな事だ。名前の聞いた事あるチェーン店なら、イメージも沸き上がり難なく入る事は出来る。小さいとかなり賭けの部分もあるし、場合によっては大きな心的コストを払う事になる。
なんて考えているうちに、お店の前に到着。
中々サッパリした感じで、ここまでこれば中は丸見え。
ちょっとした安堵感ともにいざ入店。
赤を基調に間接照明で柔らかい雰囲気のお店。マンションの一室をバー使用に改造したような雰囲気。カウンターに5〜6席、テーブルが2つのこじんまりしている。カウンターの向こうには、レコードセットが置いてあり、その上には何百枚もあるレコードの棚がある。今流れているのはこの曲か。
ふむふむ・・・・、わからん。
店長さんはあごひげ蓄えた、笑顔満面の人。店内には常連さんと思わしき女性のお客様が1人。とても仲が良さげだ。
ドリンクメニューはバーとしてはとても標準的なものが置いてあり、1杯500円からとリーズナブル。フードメニューは、見る限り以外と安く設定しており、ドライカレーが目を引いてやまない。っが、肝臓はおろか浮き輪まで出てきた昨今、炭水化物は控えよう。。。
さてさて、センセイはジャックダニエル、僕はフォアローゼスを二人ともロックで注文。ウィスキーを見ると丸く削った氷が浮かんでおり、すこし嬉しい。どうも店長さんが手が空くと隙をみてガシガシ削っていました。
さて、センセイが携帯電話でメモっているので、少しトーキングを試みてみる。
二人で来て、二人とも携帯電話をいじる姿は、知っている人が見れば笑えるだろうが、ここはダレもいない。一緒に来る割には不仲というとても滑稽な姿に見えるであろう。それは避けてみた。
店長さんは、バンドのヴォーカルをやっていたそうで、女性客いわくとても甘いと言うか、小春日和な声をしているらしい。この女性はとても彼の歌声を気に入っているそうで、誉めていた。
お店の居心地は悪くなく、何となく静かに飲みたい時や、1人飲みに向いています。大人数はあまりお勧めはしませんが、3〜4人でしっぽりとなら。ウィスキー片手に、音楽と中央総武線の音を聞く。ってな夜もありかもしれませんね。
ハヤト
店名: Night Train
電話: 不明
住所: 東京都杉並区阿佐谷北2-2-8 2階
本サイトでは、対象店舗から異議が出た場合、「センセイ」および「ハヤト」の文章表現を変える可能性があります。
同様に投稿者のコメントも、管理者の判断で表現を変えるか部分的に削除する可能性があります。ご了承のうえ投稿いただきますよう、お願いいたします。
コメントを残す