阿佐ヶ谷どうでしょう。

阿佐ヶ谷のディープな飲み屋~88箇所を巡ります。


狂った阿佐谷の夜 BAR Lunatic Asylum(閉鎖、荻窪の「東京スパイスミュージアム・スパイスバー」へ)


センセイのコメント

アリちゃんのコメント


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58軒目。

ヨシコが死んで淋しいぜ、もう阿佐ヶ谷で入りにくい店は消滅したか、と嘆いていたら、忽然と開店したのがここ。

数年前から早稲田通りに奇妙な建築物が出現していた。
ビルに、モスラの繭のような木の枠が絡みついている。
ネットとかで調べると、来年秋に開店、とある。
それで楽しみにしていたら、昨秋ついに開店。

場所は「大慶」を西にしばらく行った暗がり。ビル全体がライティングされ、暗闇にボーっと浮かび上がっている。
そして入口のガラスには、「狂った阿佐ヶ谷の夜」。浮かび上がる文字がかっこいい。

ここは阿佐ヶ谷か?住所は下井草だ。
でも、「阿佐ヶ谷に住む」と決めた若者は、多くが大慶の近くに住む。
阿佐ヶ谷駅で降りてしばらく歩き、早稲田通りを過ぎた辺りで、家賃が下がるからだ。でも歩いたら阿佐ヶ谷気分が抜けないままこの場所に着く。

だから阿佐ヶ谷。西に少し行った次の角までが、住所は下井草であっても私の意識でも阿佐ヶ谷エリアである。
まあ、バーのある位置としては陸の孤島ではあるが。

重いガラス戸を開けると、カウンターのみ、4席。
天井は鍾乳洞みたいなのが降りてきている。
色とりどりの紙が貼り付けてある。
赤や茶、灰色など。葉脈が浮き出している和紙もある。
宇宙を漂うようなイメージか?洞窟で飲むようにも感じる。

「いらっしゃーい」と、瞳の大きな女性。
前回来たときはやたらと真面目な男子だったが。

「枯葉マナコと言います、東京やさぐれ女ってバンドやってます」。戸川純っぽい。かなりの集中力で喋る。ちょっと芝居ががっていて、幻惑されるな(のちにマナコ嬢は失踪)。
クラシック歌謡だそうな。CDをかけてもらう。この空間にぴったりだ。

「4席だけど、もっと入れます!」
「あと別の女性が数人。月曜は男性で」。ベリーダンスのダンサー兼占い師とか、主婦とか。不定休なんだそうだ。

そこに白髪、コートにマフラーのなかなか格好いい紳士が登場。
オーナーの堀川さんだ。
「僕は荻窪の衛生通りにsadcafeってバーを30年やってきたんだけど、今は開店休業でね」。
イーグルスの曲名らしい。ここといい、名付けにセンスを感じる。

「もともとの専門は建築設計やインテリア。
オーナーからここの設計を頼まれて気楽にやろうと思っていたら、共同経営も頼まれちゃった。それなら作品を作りたいからって三年かけて紙をちぎって張って、こうなりました」
温厚だが、やることはぶっ飛んでいる。

二階にトイレがあって、アパートみたいというか、青線の連れ込み部屋みたいというか。
その上の屋上にも出られるらしい。
なら、月見をしながら屋上で月に向かって朗読でも如何。
ローマのカフェで突如詩バトルが始まって仰天したことがあるが、ここでやったらぴったりだ。

数日して再訪する。この異様な物件が完成するまで、ときどき見に行っては偵察情報を伝えてくれたアリちゃんと。
今度は「渦」さんという別の女性。
こちらもバンドのボーカル、以前は荻窪のグッドマンにも出ていたという。
反応の言葉がいちいちに面白い。
サックスを吹くが俳人でもあるそうな。

正面に本棚のような棚がある。
グラスが四段、上段にはラフロイグとかけっこういい酒が並ぶ。
下段はまぶしいライト。
グラスは選べるらしい。
ブッシュミルズをバカラグラスでお願いする。
ストレートで、チェイサーと。

突き出しで出てきたのは、ねっとりしたチョコレートケーキ。ミルクかかっている。辛いウィスキーには合うかな。

「狂った阿佐ヶ谷の夜って、母音がいいのよね。アアッア、アアアアオ、オウだからね」。なるほど、音をとらえる耳が鋭い。屋上で「月に吠える俳句バトル」とかどうかしら。

ヨシコがいなくなって張りがなくなったかに思えたが、まだまだ阿佐ヶ谷には奇想を持つ御仁が健在だ。でも駅からは遠いから、電話してから来よう。

(センセイ)



出会いは昨年にさかのぼる。

ある朝近所を散歩していたところ、視界の隅に妙な物体が…
振り向くと、そこには白い柵に囲まれた謎の要塞。
一瞬工事中かと思ったが、こんな足場じゃ作業にならない。
近づいて中を覗くと、テーブルと椅子があってどうやら飲食店のよう。

困った時はネットの民に、と思ったが、さてなんと検索したら良いのだろう…



「阿佐ヶ谷 要塞 建物」「阿佐ヶ谷 白い格子 囲まれた」など試したものの、目的の建物にはたどり着けず。
それが「狂った阿佐ヶ谷の夜」との最初の出会いでした。

その後店名とバーである事を知り、そのセンスから店内の妄想が広がる一方、広がりすぎて一人で行くのが若干躊躇われていたため、やっと行く機会に恵まれ、期待とそして不安が高まります。

さてお店に到着すると、明け方に見るより怪しさ満載。
ガラス張りのため歩道から丸見えにも関わらず、どうにも入りづらい。



中に入ってみると、一瞬「意外と普通」と思ったが…おぉ!天井が波打っている。
波打った天井が和紙のような素材で覆われていて、洞窟のような雰囲気。
全部手作りだそうで、考えただけで気の遠くなる作業…でも期待通り。

席につくと目の前に赤色がやたら際立つ屏風絵が。
あぁ、これが噂の「えきん=絵金」なのですね。

センセイからここで「えきん」という浮世絵師の絵が見れると聞いていて、その話からはもっと猥雑で血みどろな絵を脳内に描いてましたが想像より線も繊細で、赤色が本当に美しい。
他の店なら浮くかもしれないこの絵も、この店には完全に溶け込んでます。



本日の店長さん(曜日ごとに店長が替わるシステム)が絵金祭りの地元ご出身だそうで、聞けば絵金祭りではそれぞれの家が所有する絵金の屏風絵を競うように戸口に飾るとの事。

実物大がずらっと並んだ姿はさぞかし幻想的で圧巻だろうなぁ。
日本にはとんまつり(byみうらじゅん)と呼ばれる奇祭が沢山ありますが、絵金祭りはそれとは違う異質さがあり、日本の祭り文化の奥深さを感じます。



店でいただいたチョコケーキとハイボールは普通にとても美味しくて、ただ、白い柵に囲まれた要塞の中にある洞窟のような店内で、絵金を眺めつつ田中一村やクリムトの話をしながら過ごす夜は、やはり少し「狂った阿佐ヶ谷の夜」なのかもしれません。

(30代、お酒大好き女性)


Shop Information


店名: 狂った阿佐谷の夜

電話: 080-6888-4297

住所: 東京都杉並区下井草1-24-4

19時頃~24,26時頃
不定休

Web: https://twitter.com/kulutta


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