入りにくい店を訪ねる巡礼、第49軒目。
2階は入りにくいでしょ、というのと、自然食中心で野菜や魚がうまい、という噂を聞きつけて、スターロード入口、スポーツジム脇の道を曲がった2階のここへ「やんたけ」。
暗い入口の上にかかる看板の文字は見えにくい。ひらがなは読めないが、ローマ字で「yantake」とあります。和食店の雰囲気はありますね。京都ならこの店構えで高い匂いはある。でも阿佐ヶ谷だからな。
おそるおそるドアを押すと女性が出てきて、「ご予約のお客様がおられますのでお出しするのに時間がかかりますが」と仰る。でも、奥に一組いるのみ。慎重というか、丁寧なんだろうか?
本日の相方は、カフェ「ひねもすのたり」で木曜・金曜・土曜営業の夜の部担当、Yちゃん。料理上手なんで、何か勉強になる手がかりがあれば、と誘ってみました。
店内もやはり暗い。カウンター3席に、2人掛け、4人掛け、4人掛けの3つの卓があります。カウンター上には黒板があり、本日のお料理が書かれています。
カップルでしんねりと楽しみたい人にはいい雰囲気ですが、なんか、既視感がある。あ、そうだ。ここは「プロレスとブルース」の跡だ!
この奇妙にして心惹かれる店名のバーは、10何年か前までここにあった。プロレス飲み屋なる営業形態には思い出がある。さらに昔、下北沢のすずなり横丁に「ステップルハウス」なるプロレス飲み屋があり、ここは新日本プロレスファンの集会場であった。
入店するなり「何にしますか」と尋ねるので「とりあえずビール」と答えると「そうじゃなくて、ビデオから」と返される奇妙な店であった。
他の客は「マスター、最初は8.21中島ね」なんて言う。「へい、藤波長州三度目ね」と、マスターはビデオを挿入し、試合のビデオを観賞するのである。
しかしこのマスターも亡くなり、総合格闘技が登場してプロレスも下火になる。ちょうどその頃に阿佐ヶ谷に出現したのが「プロレスとブルース」。マディウォーターズと藤波長州を同時に注文するような店なのだった。
もう少し前に開店していたらと惜しまれるが、私も次第に足が遠のき、いつしか閉店していたのだった。
うって変わって「やんたけ」。小野リサがボサノバでジャズの古い曲を唄っている。
天井にはファンがゆるゆると回っている。
お通しの豆腐が出てきた。奥さんが気にするほど遅くはない。酒盗がセンスを感じますね。それにトマト添え。
もずく酢を注文したら、ゴマと生姜がまぶしてある。ともに、丁寧な作り。
先客は、外人さん。学者らしく四人で「薩摩魂」と書かれたTシャツを着ている。日本通なんだか、ピントが外れているんだか。文化人類学者みたいな会話をしている。
お店を営むのは、上品な奥さんと寡黙な旦那である。おそくなるからと、後の客をさらに断ってます。
「どうですか、いまの」と奥さんが外人さんに尋ねる。お客さんと会話しながら感想を把握しようとしているようだ。押しつけがましくなくて、いい。
刺身がいろいろとある。「赤いか」を頼むと、賽の目に切って、頬張ると柔らかいのが出てきた。ねっとりと、甘い。ビールが進みますね。
鶏の白レバー刺身はニンニク添えで。
料理を楽しみに来るというか、会話する時間がゆったりと流れていく店だ。「互閃」は白々と店内が明るいから、同じ和食でも値段といい対照的ではある。こういう店を知っておくといいな。
Yちゃんは人妻だし、知り合いだから口説くわけにもいかん。真面目に食事を楽しむのみ。
Yちゃんは以前に酔っ払って階段を落下、そのまま帰宅して就寝。朝起きたら顔面が異様に痛いので病院に行ったところ、骨折していたという猛者である。「今日は落ちないようにね」なんて会話をする。
すみません、非の打ち所がなくて。
(センセイ)
「今晩これからどうでしょう?」
前々から参加表明はしていましたが、センセイから突然のお誘いです。
「場所はスターロード2階の自然食居酒屋、 もとプロレスとブルースの店です。もう来てますよ」
というわけで、はじめまして。
「阿佐ヶ谷どうでしょう。」初参加のYです。
夜の阿佐ヶ谷をぶらつき始めて30年、移り住んで23年、人生の大半をこの街で過ごしています。
自転車を走らせ、センセイご指定のお店へ。スターロードTOA(スポーツジム)の角を曲がった左手2階にありました。
自然食居酒屋 やんたけ
酔っぱらったら降りるな危険! みたいな階段が多いこの界隈。
やんたけの階段は不自然なほどにゆったりとしています。
もと「プロレスとブルースの店」だから?レスラーがふたり並んでも行けそうです。
あれれ?「阿佐ヶ谷どうでしょう。」って、入り難い店に敢えて入るっていうコンセプトなのでは?
明るくライティングもされてるし、
とにかく、ひとっつも入り難くありませんよ、センセイ。
ゆったり感を堪能しながら昇ろうとすると、なんだかがに股にシコを踏む感じになってしまいました。うわっ、なんで!?
それでは店内へ。
とても誠実そうな店主ご夫妻が迎えてくれます。
センセイも笑顔で生ビール!
居心地よさそうです。
ワタシも生ビールを注文。
冷えたグラスに程よい泡立ち、申し分ありません。お通しは奴の酒盗のせ、美味です。
メニューには季節のものが並び、お値段はどれも驚くほどリーズナブル。
いか刺しに鯵のなめろうにもずく酢をいただきました。
どれも丁寧なつくりでお味も最高です。
センセイは、ざる蕎麦を追加注文してこれまた美味しそうに召し上がっていらっしゃいます。
なんだかなぁ・・・。
お店の雰囲気も何もかも、非の打ちどころがなくて、わざとらしさの欠片もなくて・・・。
それなのに、何か物足りない。
どうして?
それは「阿佐ヶ谷どうでしょう。」の取材だから。これじゃあ面白くないんじゃないかと思ってるから!?
帰り際、最後の悪あがきにトイレを拝借。ここに隙があるのではと期待するも、とても清潔で想像以上に素敵な空間・・でございました。
はい。大反省です。
無理なあらさがしなんてナンセンス!!
というわけで、ワタシの「阿佐ヶ谷どうでしょう。」初回のお店は、
これでいいでしょう!
としか言い様のない優良店なのでした。
ばんざ~い!
(40代。ミュージシャン妻・料理人)
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