14カ所目。
阿佐谷の飲み屋って、基本的には常連さんで成り立ってる。大きなハコってほとんどないから顔つきあわせて飲むことになり、当然客も顔見知り。店も常連さん頼りになるから、持ちつ持たれつとなる。
でも常連で固められた店は、バリアーの高い店でもあるわけで、我々の「入りにくい店巡礼」のターゲットになる。なかでもスナックは、常連度が高い。そのうえ料金も旧い阿佐谷値段。一杯500円とかいう価格破壊じゃない。魔窟のように感じられるのも、むべなるかな。
というわけで、少なくなったとはいえ点在するスナック、なるべく濃い~店に入ろうということになり。一番街、ラブホの角を右折した地帯、バルトの向かいあたりにあるここに来ることにしました。
「司」
う~ん。堂々たるスナック名前だ。
しかしいつも前を通っていてここが気になるのは、いわゆるスナックの雰囲気が強いからじゃない。エントランスが素晴らしいのだ。ひょっとして、阿佐ヶ谷でいちばん素敵なエントランスじゃないかしら。扉の手前、2メートルほど左右を植物が覆っていて、花も咲いているし、ジャスミンの香りが漂っていたりする。この植物のトンネルをくぐるだけで、スナック物語が始まるという塩梅。
扉には金属製の看板が貼り付けてある。紅い3つ薔薇と、「WELCOM」「つかさ」の文字がある。植物に囲まれて、幻想的です。
度胸を決め、グッとドアを押す。「いらっしゃーい」と、なかなか綺麗な女性の声。にこやかである。意外と若い。あらサーか?
カウンターのみL字型。正面の棚にはボトルが三段ずらりと並んでいる。卓上に置いてあるボトルには、銀杏が入ってる。スナックだ、やはり。
正面左には大きなカラオケの壁掛け式モニター。後ろには古いテレビやギター、鉢植えの花、ビートルズのアビーロードのポスター、大きなキティ人形等、無数にモノが置いてある。雑然としているが、親しみやすい女友達の部屋みたい。
「ヨシロンと申します~」と女性。チーママだそうである。本日は、大ママは不在。
ワタシは芋焼酎の「明るい農村」を水割りでお願い。今回は家内が同行している。こちらはお湯割りで。ハヤトはウイスキーか?みな、ショットで頼む。やまいもとキュウリ千切り酢の物がつきだし。では、乾盃~
「ここ、35年もやってて、一番街で一番古いんですよ」。ワタシの調査では、食べ物屋の「唐津」も相当に古くからやっていると聞いている。今度、そちらも訪ねてみよう。「だから年齢層高いでしょ?」
なるほど隣には、野球帽かぶった親父さん。「酔ってるから変なこと言ったらごめんね~」と笑顔でご挨拶下さる。で、さっそくお父さんはカラオケ。ヨシロンにお金渡して「ヤーレンソーランよ~」と歌い始める。
お父さん、歌い終わるとマイクを渡してくれる。「順番ですから、歌ってもらえませんか。飲んでるんだし、ストレスためないでね~」。親切だ、常連さんは。で、ハヤトが松山千春を歌う。あれ、なかなか上手いじゃないか。「右から左へどうぞ~」とお父さん。ワタシはちあきなおみの「黄昏のビギン」。
ヨシロンはなかなかに天然な感じの女性である。倖田來未の「キューティーハニー」をご披露。お父さんも唱和。「なんで知ってるんですか?」「パチンコ入ると鳴るから覚えたんだよな」なんて喋ってると、ヨシロン、「見つめちゃ嫌~」、のところで長いまつげでウィンク!可愛い!スナックだ!!
一巡して、お父さん。オックスの「スワンの涙」を歌い始める。団塊の世代なんだろうか?オジさんと赤松愛は合わないが、世代は同じかも。「57歳なんですぅ~」、なんだそうだ。
トイレに入ると、ここもものすごい数の猫の人形や狛犬の写真やら、キティちゃんの提灯やらが所狭しと並べられている。大ママの趣味みたい。
ワタシとハヤトは二杯飲み、計シングルで5杯。つきだし入れて、三人で8000円。ボトル入れたら一本5000円だそう。もっと長居するにはボトルがいいかな。楽しいじゃないか、スナック遊び。今度は大ママ見に来ま~す。
(センセイ)
14箇所目に突入。
本日は、ひょんな事からセンセイの奥さまも参戦。ケッタ(方言で自転車の意)で登場して、三人で一番街へ向う。
一番街。
どうでしょうが始まって以来、何度この道を往来した事か。相変わらず阿佐ヶ谷を語る上では外す事ができない道だろう。周囲には1人では入りにくいお店がちらほらと。
そんな一番街に並ぶお店は、昔からの作りなのか、看板の位置が低いな〜っと思ってた矢先、看板に、バゴン!っと頭をぶつけた。
まれに見るクリティカルヒットで一瞬クラッとしたその先に、14箇所目のお店がある。
一番街の中でも、中々独特の雰囲気を放つ外観。葉っぱのトンネルと言わんばかりのメルヘンチックかつ、ハリーポッター的な外観から、一瞬カフェかと間違えてしまう。「つかさ」の看板が、この店のアイデンティティーを確かなものとしている。
この雰囲気、まさしく「阿佐ヶ谷どうでしょう」にふさわしい。俺、一人だったら入る事はなかったであろう。
何のお店だろう?やっているのか?っと3人で頭の上にハテナマークを浮かべながら、いざドアを開ける。
「イラッシャーイ」
片仮名にすると何故か師匠になってしまうこの言葉。もう一度書いておこう。
「いらっしゃーい」
ひらがなでも師匠か。
と、そんな事は置いておいて、ドアを開ければにこやかなママらしき方がご挨拶をしてくれた。
店はL字のカウンターのみで、後ろにはずらっとお酒のボトルが。これはまさしくTHE SNACKだ。スナックってなんだと今更ながら考えるが、スナックだ。
店内には、女の子の部屋にありそうなグッズが置かれている。またキティちゃんの人形が様々な場所に存在している。文字で見ると、以外と乙女チックなんだが、全体の雰囲気はやはりスナックなのです。独特の。
スナックにはいつも常連さんがセットのように存在。ここでも、野球帽を被った常連さんが気持ち良さげに飲んでいる。
席について、ドリンクをオーダー。センセイと奥様は焼酎を、そして僕は何を頼んだら良いか分からずに、センセイと同じ物を頼むと言う小心っぷり。
何はともあれ乾杯。スナックはいまだに勝手が分からないぜ。
キュウリと長芋の酢の物が登場。それをつまみにほんわりした30代くらいのママと話をしていると、なんとこのお店は35年前からやっているとの事。すげぇなぁ。
最近、阿佐ヶ谷のお店を回ると、自分が生まれる前からのお店に遭遇する機会があって、その度に色々と考えさせられる。継続する、お店を構え続ける、何か1つを続ける事を。
そんな事を考えていると、ほどよく酔われている隣の常連さんからカラオケのオファーが。「順番で、順番で歌ってください〜」って。こういった、飲みにケーションが、中々楽しい。
「俺は断らないぜ、おっちゃん。」
と、心の中でグッと親指を立ててみる。
とは言っても、何を歌うべきか。。。湘南乃風は・・・無しだな。
俺の足りないCPUをフル稼働させて、この状況、雰囲気、隣のおっちゃんにマッチした曲はあるのか脳内検索してみる。
【本日の脳内検索キーワード】
「スナック、常連のおっちゃん、ことわれない、カラオケ」
【検索結果】:もしかして 松山千春
「大空と大地の中で」決定!
ありがとう、「水曜どうでしょう」。ありがとう、「大泉洋」。貴方の番組を見ていたので、自然とこの曲は頭に入っていました。ありがとう北海道。今日も無事乗り切れました!
そんなこんなで打者一巡。センセイも奥様も歌い切り、ママの番。
「キューティーハニー」
焼酎吹いた。
ママ、やるじゃないか。
そんなこんなで、少し長居してしまいました。阿佐ヶ谷のスナック遊びとなると、色々な人間模様が見えてきます。俺みたい頭ん中でごちゃごちゃ考える奴も入れば、気さくに話しかける常連さん、全てを楽しむセンセイと奥様や、至ってマイペースのママ。
時代が変わっても、人は大きくは変われない。
この店には35年の間、様々な人が、様々な楽しみ方で、自分の人生しょって飲んでるんだなぁ。っと、夜はさらに更けて行くのでした。
センセイと、奥様と、僕で合計5杯で8000円。
スナックの相場は未だに分かりませんが、スナック遊びという新しいジャンルが増えた夜になりました。
皆もデビューしてみる?
(ハヤト)
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