阿佐ヶ谷の入りにくい飲食店を訪ねて、その59。
阿佐ヶ谷に「アイツ」が帰ってきた!
一人営業なのに「24時間オープン」という、誰がどう考えても無理な経営方針が奇抜すぎたか、閉店したラーメン店『俺ん家』。
その後、跡地には何軒か居抜きでごく普通のラーメン屋が経営されていた。
だが昨秋、深夜に煌々と看板が灯り、『俺ん家』とあるではないか。さっそく入店してみた。
ホントだ。ヨーチャンが、木彫りの人形みたいな満面の笑みのままで立っている。
いろいろと聞く。
要約すれば、香港も含め7店舗の営業を経て阿佐ヶ谷へ回帰したというのだ。
今回は24時半から9時まで。
ああ、さすがのヨーチャンも睡眠時間を取るようになったのかと奇妙な納得をした。
カウンターには、寿司台が一席ずつ固定されている。
メニューを尋ねると「寿司と焼き鳥ともつ煮込みとラーメン」。
やっぱり変だ。
手袋を忘れて帰ったので再訪して、しばし談笑。
ヨーチャン、最近は阿佐ヶ谷に住んでるらしい。そこで朝9時の閉店後に睡眠を取っているのかと思ったら、驚愕の新事実が。
「いや、朝10時から東陽町で店をやっているんで、そっちに行ったり」
そっちも経営していると。なんだ、やっぱり24時間仕事態勢は変わらないじゃないか。AVの村西とおる監督は1日36時間働こうとしたらしいから、同タイプなんだろうか。アイツはやっぱり変わっていなかった!
「自分にブラック企業」な人格である。
そこで今回は「よるもすのたり」担当、ヨーチャンのおかしさを散々吹き込んでおいた料理人Iちゃんと24:30を待って再訪。
どえらく明るい照明のカウンターには、先客の女性がお一人様でサワーかなんか飲んでいる。我々もさっそくビールで乾杯。
あれ、カウンターの寿司台なくなってるじゃない。
やっぱりカウンターで仮眠を取っているのか?
いつの間にか漫画本の棚が出来てる。色紙とフィギュアも整列。
ワタシはニラのおひたしを注文する。いつものごとくヨーチャンは超高速で茹で、水をくぐらせる。それだけの料理なんだが、笑いながらコマ送りのような動きで作られると見入ってしまう。すぐ完成。醤油をかけると微妙に美味いな。
メニューが増殖している。「イタリアン風玉子焼」って何だ?裏メニュー「見た目ラーメン 蕎麦」とか。メニューに書いてあったら「裏」にはならなそうなもんだが。
その中から「ざるうどん」を注文。氷に乗って出てきた。ネギをかけて食べる。
いろいろいとおかしい。
朝まで営業、阿佐ヶ谷最終地点は「暖流」というのが定説ではあるが、それに挑戦する店ですな。
(センセイ)
お暑うございます。
今年の夏も猛暑まちがいなしを感じさせる今日この頃です。
予感だけで夏バテしそうなわたしに、いつもお肌ツヤッツヤのセンセイからのお誘いです。
「24時間働きっぱなしの面白い店主がやってるお店があります。いつ倒れちゃうか分からないから早めに訪問しましょう」
うそでしよ。24時間働きっぱなし?
わたしなら3日で死んじゃいます。
心配なのですぐに訪問
場所は阿佐ヶ谷でも一二を争うディープな通り「一番街」。
派手な緑色の電飾看板が目印の「俺ん家」です。
深夜0時半から営業開始。
何でかというと、他でももう一軒お店をやっているからだそうで、それで合計24時間営業。
普通じゃありません。
「それでね、ラーメン居酒屋なのに握り寿司もあるんだよ」
って、無茶苦茶ですね。
なんでもいいから、入っちゃいますか。
カウンターに陣取るやいなや
「あれぇ?寿司下駄なくなっちゃったの?」
と、センセイ。
カウンターに固定してあったんだとか。
「だれも寿司頼んでくれないし、邪魔だから取っちゃいました」
と明るく答えるのが、「俺ん家」の俺、店主のよーちゃんです。
「あれ、墓石だったんですよね」
と、奥から撤去した寿司下駄を持ってきて見せてくれます。
「そうだったんだぁ。あった方が面白かったのに〜」
無くても十分面白そうですけどね。
店内には何屋さんなのか完全に見失いなう程の溢れかえるメニューが。
種類豊富なラーメンはもちろん、中華太麺使用のナポリタンやイカスミ麺、鰆の西京焼きやブタハラミ炙りステーキ等のちょっとした一品料理からもつ鍋(一人前から)、生姜焼き定食等のお食事セット、一貫80円均一の握り寿司と軍艦巻、謎の痛風四種盛や月がわり裏メニュー(見た目ラーメン蕎麦?)・・etc。
一品勝負のお店が急増する昨今、完全に逆行しています。しかも、ひとり営業なのに。
センセイはニラのおひたしを、わたしは恐る恐る海老といかの握りを注文。
作り置きではなさそうなのに、直ぐにお料理が出てきます。
ニラのおひたしも問題の握りも普通に美味しいし、ちょっと笑えるよーちゃんの素早い動きは見ていて飽きません。
「なんでこんなにメニューが増えちゃったの?」
「うーん、やってるうちにね。
前はもっと多かったの。スパゲティ100種類とかもやってたから」
そうですか、すみません。これでも減ったのね。
黒糖焼酎の水割りをおかわりしながらまったりしていると、大概のことは本当にどうでもいいんだと思えてきて、店内にはかかっているはずの無い「ええじゃないか」が聞こえてくるようです。
ちなみに店主のよーちゃん、現在は阿佐ヶ谷店のみの営業で、24時間働いてはいないようです。
安心しました。
不思議な幸せ感のあるよーちゃんには、元気に永く営業し続けてほしいものです。
くだらない理由で人生に行き詰まったような気がした時、出社拒否したい朝、出勤前に立ち寄ってみたらどうでしょう?
朝9時までやってますから。
冗談ですよ。
ええじゃないか
(40代。ミュージシャン妻・料理人)