入りにくい店を訪ねて、59軒目。
この通りのお店は大方伺っているが、やはり「元青線」は入りにくさとして貴重。
本日は、中でも老舗の「春日」にお邪魔します。
過去にも日曜とかに何度かトライしたけれど、いつも満員だった。
本日の相方は、アリちゃん。
こうしたお洒落でない店には似合わないような教養人&美形ではあるけれど、庶民的な性格は結構合っているかも。
ガラガラっと引き戸を開けると、カウンターが6席あります。
右方には2人席が2つ、奥は大きい席。
お一人様もお二人様も、さらに仲良くなったら大きい席でも、という配置でしょうか。
お馴染みさん風の男性と、やはりお馴染みさんらしいカップルがカウンターの先客。
我々は2人席に。
「いらっしゃーい」とおしぼりを持ってこられたのは、目が切れ長で鼻が高く、バタ臭い(死語?)茶髪の女将。きちっと着けた酒屋の前掛けがミスマッチです。
大将は寡黙に調理中。
ここは馬刺しが有名と聞いていたので、さっそく注文。それとマグロぶつ。
ビールで乾杯する。
いやー、居酒屋だわ。
荻窪の「やきや」は格安居酒屋の名店ではあるものの、無言の女将が店中に緊迫感を与える。
その点、この「春日」は居心地がいい。
雑然としていると言えば、雑然。
壁にはお祭りの写真が6枚も。年違いで御神輿を担ぎに出た時のものらしい。
商店会を代表するお店なんですね。
ラピュタのチラシは綺麗に束ねてある。
そこに、男性客が一人入店。
次いで、また独り客。
さらにもう独り。
示し合ったわけでもないのに、なんとなくここで会う感じかな。
年齢も違っているが、常連としてよしなしごとを喋っている。
また、入ってくる。
各種の地図も貼ってある。日本地図のカレンダー。世界地図、地下鉄地図。
カレンダーも、競馬カレンダー、JRのカレンダー。
「ろーめん」、とある。
「これは何ですか?」
伊奈地方のB級グルメとのこと。注文すると、汁気が多い焼きそばだった。
なんだか、のんびりするなあ。
男が独り家を出ると、ふらふらとここに足が向くのでしょう。
お一人が勘定をすませて去ると、女将さん「忘れ物ないかな?あの人、必ず忘れ物するから」。
素敵な言葉だな。
こんな風に言われるから、また明日も独り男は来ちゃうんでしょう。
(センセイ)
一番街を抜け、阿佐ヶ谷唯一と名高いラブホを曲がってすぐ、
昼間でもやや暗めなどん詰まりに「春日」は佇んでいる。
以前「ヨシロン」を訪れた際、奥の「春日」という看板が目に留まったものの、
その看板から漂う「常連しかいなそう」感から、一生訪れる事はないだろうと勝手に決めていた。
阿佐ヶ谷どうでしょうをやっていなければ、実際そうだっただろう。
うっかりセンセイより先に着いてしまったものの、中が見えないので入りにくい。
店の前で立ちすくんでいると、何やら楽しげな声が。
意を決し入店すると、左側のカウンターに若いカップルとおじさま1人客、
キッチンのご主人、ホールの奥様交えみんなでおしゃべり中だったが、
私に気付くと一瞬話が止まり、全員がこちらを振り返る。
狭い店あるあるだが、初めての店で注目を浴びるとやはり緊張する。
入り口で逡巡していると、奥様が笑顔で迎えてくれてとりあえず一安心。
目鼻立ちのはっきりした美人で、誰かに似てる…が名前が出てこない。
とりあえず右側の小上がりに座りビールを注文。
ぼんやり店内を見渡すとやたらカレンダーが目につく。
競馬カレンダー、JRカレンダー…なんとなく実家が思い出される。
なぜ母親という生き物は、あんなにカレンダーを飾るのだろう。
そんなことを考えているうちにセンセイが到着し、マグロブツと馬刺しを注文。
ウーロンハイに切り替えると、徳利に入った焼酎と瓶ウーロンが。
焼酎でも徳利から注ぐと何となくウキウキするから不思議。
もう少し何か食べたいなと思い店内のメニューを見るが、
達筆すぎて全然読めない(笑)
実はビールもウーロンハイも、読めないから有りそうな物を頼んだのだった。
そこでおススメを伺うと、鰆の西京焼きとローメンとのお答え。
ローメン????
長野県伊那地方の郷土料理だそう。
全く想像がつかないまま注文することに。
出てきた料理は、見た目は焼きそば。味も大体焼きそば。
飲んだ〆に丁度良い感じ。
いつのまにか店内は私たちを除いておじさま1人客のみ。
今扉を開けていたら、入れず帰ったかもしれない…
でも、一歩入ってみれば、優しく楽しいご夫婦が温かく迎えてくれる、
なんとも居心地の良いお店なのでした。
あ、奥様、市村正親に似てるんだ!(あくまで個人の感想です。)
~後日談~
吉田類ファンである知人の、阿佐ヶ谷で飲みたいとのリクエストに応え
「つきのや」→「春日」と酒場放浪記ツアーを開催し、春日に再訪することに。
やや遅めの時間だったため、お客さんは私たちだけ。
その分前回よりご夫妻と喋れて、その雰囲気に知人もすっかりご機嫌。
知人がおすすめを伺うと、「ローメン」とのご回答。
早速注文し、食べてみる。うん、美味しい。
でも今度は違うのを食べてみよう。
(30代、お酒大好き女性)