阿佐ヶ谷の入りにくい店を訪ねて、58軒目。
café が木・金・土だけ夜の部でも延長営業している。「caféひねもすのたり」の夜営業。私は勝手に「よるもすのたり」と呼んでいる。
隠してもしようがないので先に白状しておくと、昼間の「caféひねもすのたり」は家人の営業。Caféとして飲食できるが、本来は器のギャラリーである。それで夜はアルコールにも力を入れようと、料理上手な「いずみ」さんに担当していただいている。
北口を出て右折、河北病院に行く東京三菱UFJ銀行脇の道をしばらく歩くと有名な「うさぎや」がある。その2軒手前の2階。
ただでさえ2階であるのに時間限定営業なので、「入りにくい」というより、存在が知られていないと言うべきか。
昼間はいろいろイベントを開催していて、能講座のような上品なものからAVの村西とおる独演会も。今晩は「よるもすのたり」で、ショパンやドビュッシーを鬼のように弾くピアニスト・ナカジマ嬢とおデート。
壁には昼間にイベントでネックレスの即売会をやっているため、ずらりと値札のついたネックレスがかかっている。これも壁の装飾に見えるな。
この空間は、建築学会賞(高知県・竹林寺納骨堂)も受賞した人気沸騰の住宅建築家・堀部安嗣さんの設計。光の粒が見えるかのような独特な透明感だ。
中央に4つのテーブルをまとめた大きな卓がある。そこに本日は、熟年の男女がバラバラに陣取っている。それぞれに帽子というかお洒落ハットをかぶっている。
ばらせば2人席が4つになるかも。映画や野球の話で妙に盛り上がっている。木曜日限定で集まる常連さんだとか。
あとは別のテーブルに女性の二人組。ご飯セットのプレートを前になにやら人生を語っているみたい。ご飯と一品ついて、味噌汁とお漬け物がセットになっている。
我々はもう一つの2人席に陣取る。つきだしには厚い卵焼きのサンドイッチという珍しいものが出てきた。和風のしっとりした卵焼きがはさんである。
阿佐ヶ谷では「つきだし・チャージなし」制が普及しているが、それだけに店側はつきだしを出すなら美味しいものを用意せざるをえない。これは旨いな。
まずはビール、ハートランドで乾杯。いずみさんは、フェルメールの「ターバンの少女」みたく頭に布を巻いている。これが定番の出で立ちだ。
ワタシはカレーパスタ、ナカジマ嬢はブリの塩麹焼きを注文。新玉ねぎのスープは2つ、すぐ出てきた。ポタージュでミルクがたっぷり、陶器のカップに入っている。当店は昼間も、作家モノの器で食事を提供しているのだ。
少しして、カレーパスタが到着。牛肉で、筋もトロトロに煮込んである。チーズが濃厚で、結構量があってかなり腹一杯になる。
ナカジマ嬢のブリは、あんまり塩麹ぽくなくてオリジナルの味だそう。ぱくぱく食べている。ま、ピアニストは肉体労働だからね。
グラスワインもいただいて、「ピアニストにとって、録音とは何か」などというマジメな話に熱中していく我々。
バーのような「2人だけ」っぽく灯りで仕切る設定だったら、もっと色気ある話題になったかもね。しかし室内が隅まで均質に明るいので、酔いが色気には向かわないのだ。
ワタシはどこかの素敵な庭にグランドピアノを置き、超絶演奏を繰り広げるところを撮影してyoutubeで流したいのだが、生真面目なナカジマ嬢のガードはなかなか堅い。
そうこうするうちにチベット人の常連男性登場。豪勢にワインをボトルで注文、ワタシたちまでご相伴に与り、さらに酔っ払ってしまった。
酔ってもお色気に走らないというのはワタシとしてはなんだか妙な酒ではあるが、ま、こんな食事が楽しめるお店です。堀部ファンもいらしてね。
(センセイ)
三度目のお声掛けを頂きました。阿佐ヶ谷在住のピアニストです。
入りにくいお店の取材、阿佐ヶ谷どうでしょう。
・・・のはずですが、まず始めに、今回のお店は私にとりまして阿佐ヶ谷イチ!「入りやすいお店」であることを正直に打ち明けます(^_^)/
昼間は、美味しい定食、好みの器、様々な個展、ヴァラエティーに富んだ興味深い企画イベント、店主ファンの個性豊かなお客様達、etc....で実に楽しいカフェ「ひねもすのたり」。
かれこれ10年は通っています。
売れっ子建築家、堀部安嗣さんの設計による自然な明かりにほんわり包まれながら、「ここで夜もゆったりできたらいいだろうな~」と長年妄想していたのですが、それが叶った(2015年1月)のが、夜の部「よるもすのたり」(木金土曜限定)。
店長いずみさんの気の利いたメニュー、量も、その時の気分、腹具合に自由自在に美味しく寄り添ってくれますし、明るすぎない照明も、これまた落ち着くのですよ。
そんなわけで、独りでも気楽にフラッと立ち寄れる、今一番のお気に入りとなっております!
おっと、これでは完全にお店の回し者・・・(^_^)ゞ
では、そんな今も多少「入りにくい?」と思う要素を二つばかり上げておきましょう。
まず、ちょっと他のことを考えていたりすると、お店に向かっているのに入り口前をいつの間にか通り過ぎている・・・。ハイ。「間口がとても細い」です。人がすれ違えない幅。
そしてお店は二階。「階段はかなり急勾配」です(ハイヒールの方は体幹意識が必要!)。
飲んだら帰りは要注意。転げ落ちたら骨折!!と毎回自分に言い聞かせて昇ります。
さて、先生とお約束の時間に階段のふもとに到着すると、戸が開いている様子。
賑やかな話し声が聞こえます。今宵も楽しそう。
「こんばんは~」と静かに顔を出すと、店長始め、お客様全員が「いらっしゃ~い!」「こんばんは~!」とにこやかに迎えて下さる。
さすがに「ただいま~」とまでは言いませんが、帰ってきた感いっぱい。
独りの時は大抵真ん中の団欒型?大テーブルに席を取りますが、今日は奥のテーブルに着席。先生をお待ちします。
すると、若くて可愛らしい女性のお二人組がご来店。お酒を飲みそうにない?!
店長、すかさず「今の時間カフェの方ではないですが・・・大丈夫ですか?」
「はい!」威勢のいい即答。
彼女達は、小さいもう一つの方のテーブルに着席。
いい感じに賑わっています!
そこへ先生ご到着。
乾杯の小さいビールに、鰤の一品、生ハムやルッコラのサラダ一品、等をオーダー。
お通しは、辛子のパンチが効いた玉子サンド。
これが実にしっとりとよく出来ていて、店長の名物の一つです。
見目麗しい出し巻き玉子の作り方と、それを挟んでカットする現場を見たい!!
オーダーの声が次々に上がる中、その全てをお一人でテキパキとこなす店長のお姿は、頼もしく、逞しい。
でも、思わずお手伝いしたくなってしまいます。
いつでも手先に使って下さいね~!(実は一度助手経験済み)
てんこ盛りの薬味(絶妙なブレンド)が乗った鰤の一皿に舌鼓を打ちながら、焼酎のロックをオーダー。合う!そして海老ワンタンも追加注文。
先生は、私も前から気になっていたカレーパスタをご注文。
一口頂きましたが、スパイシーで、これは若い腹ぺこ男子にイチ押し!ボリューミー!
先生、それを完食なさり、お腹一杯のご様子。そりゃそうだ・・・(^_^;
するとそこへ、常連のお客様がもうお一方、ご来店。
赤ワインのボトルを注文なさり、店長と「乾杯~!」。
グラスのい~い音と、その素敵な光景にうっかり、「わぁ~、いいなぁ・・・」などと声を発してしまった私。
「飲む?」「!(^^)!」
先生も私も、ちょこっとご相伴に与ることに・・・(^_^;
調子良くあっという間に2本目に突入していた記憶が残っております。
和気あいあい。
飲んでどんどん声が大きくなっていく皆の会話に交ざるもよし。
誰かさんの様に、ガラケーワンセグのプロ野球生中継を覗き見るもよし。
巷の喧騒を忘れる時間と空間です。
他、雑穀米のご飯セット(小鉢付き)汁付きも、お薦め!
お財布にも優しい(*´▽`*)
(阿佐ヶ谷在住ピアニスト)