第七カ所。
当店のオーナー、さきこ「ママ」(て言うのか?いまどきの店でも)には、阿佐谷飲み屋ボーリング大会のうちあげ、はたまたtabasaでまったり飲む様にグッときて、ついある晩に居住まい正して訪ねてみることにしたんである。
ところが看板は消え、店内はボーっと灯りがついている。ガラガラと引き戸を引くと「すみませーん、終わりでーす」と濃厚美女のママ。大きな瞳、明るい浅川マキというか。あ、やっぱりこの店にいるんだ。
では本日は退散。というもののさっそくに再訪。ここは南口中杉通りを東に渡り一番街の中頃、ラブホの角を折れたあたり、左「バルト」の角を左折したところ、「うぶや」の対面だ。
「先日来られましたよね-?」あれあれ、ウェルカムではないか。正直前回は、ワタシも年齢制限で拒否されたのかと心配したのよ。それはそれはと通していただく。
土間というか、雑然とした空間に、四人掛けテーブルが手前に、次にクッションの良い王様椅子。カウンターは「く」の字型で七席ほど?壁には何故かハッピーバースデーの文字。
本日はワタシ一人なので、「さきこ」さんとじっくりと話させていただく。今年で開店8年、その前は大阪で店を開いていたそう。東京に出てきて、ここ阿佐谷一番街に居着いたという。飲み屋というより、食事をしっかり出したいらしい。そういえば、Loft等で何回か開催されている「阿佐谷カレー計画 No curry No Life」は、さきこママが主催者である。当然、普段からカレーは名物。
そうこうするうちにガヤガヤお客が入ってきて、その日に伺う話はおしまい。そのまま横でママとお客の会話を聞いていると、どうやら音楽やアートなんかの関係者が多いみたいではある。ま、冷蔵庫の上にモノが積み上げてあるような雑然とした、しかし妙に落ち着く店なんだよな。王様椅子に座って寝ちゃう人もいるし。
で、ハヤト君と連れだって、再再訪してみる。外でチャリを止めていると、今回は日曜のせいかドドーッと騒ぎが外にまで聞こえる。実はこの店、「結構、入りやすいんじゃないか」と思ったこともあったんだが、これは入りにくいわな。
なんだなんだ、これは。店いっぱいに客がいて、座った客の膝にまた客が乗っている。その上にもまた客が。高校のサッカー部の部室というか。カオスである。闇鍋状態というか。
「あーツ、センセイ!!」ありゃ、知り合いのHちゃんではないか。「私、さきこママを阿佐ヶ谷の女神と思ってんねや」と大阪弁で言う。で、最近はここにいついているらしい。「でも、入るのに3年かかったお客もいるらしいんよ。入り口の前をうろうろ通り過ぎて」。やはり入りにくい店らしい。でも私にはウェルカムで嬉しい。
ママと二人の女性の三人で日替わりに切り盛りしているらしいが、本日の担当は「めぐ」ちゃん。可愛いが勝ち気そうな女性。ママはしっかり客のように飲んでいる。
なんだか、男女とも一人で来てる大人客が多いみたい。山高帽をかぶった「軍曹」というお客さんは、前回も会った。飲食店のオーナーさん、店長さんがやはり多い。まるで「若手飲み屋商店会」である。あと、他店の常連さんも浮気しに来ている風。
音源は「はっぴいえんど」がかかっている。「肉豆腐」とか「キノコ豚汁」とか「牛丼、豚汁つき」とか、まるで定食屋のような注文が飛び交う。そうこうするうちに、豆腐が品切れになったらしい。さきこさん、ガラガラと引き戸を引きながら、「ふーふぁーふぁーふぁー」と呵呵大笑しつつ去ってゆく。西友に「男豆腐」を買いに行ったらしい。豆腐にはこだわりがあるようだ。
うむむむ。ひょっとしてこの店は、「飲み屋」「定食屋」ではなくて、「シェアハウス」なんじゃないか?一軒家を数人で共有して、リビングではたまたま暇な人が酒盛りしたり一緒に食事を作るというか。もちろん料金は払うんだが、「カウンターの向こうのママ」に払うというよりは、料理上手の友達に作ってもらう感じ。まあ先走った言い方かもしれないが、「常連」とか「顧客」とか言うのとは違う空気があるんだな、お客の間にも。
我々のお勘定は、ハイボール計4杯で2000円。なんと、1杯500円でチャージなしである。オヤジ目線でいうと、こんなに美女ばかり間近で拝見して、こんなに安くていいのかしら。ここもまた阿佐谷である。(センセイ)
なんと、サキコママが急死されました。ご冥福をお祈り申し上げます。素敵な空間とカレーをありがとうございました。
7箇所目、残り81箇所。
はて、今回も阿佐ヶ谷飲み屋樹海に迷い込んでしまったようだ。
阿佐ヶ谷が誇るラブホテル「エスプリ」を右手に曲がり、1本目の道を左折。
そうすると広がるのが、民家・・・・じゃなくて多分呑み処の集まり。
これが一番街か・・・。
家だな。
回覧板でも持って行くか?
ふと右手を見ると、黒い蛍光看板が見える。
新しいのかLEDなのか、まぶしくて文字が見えない・・・が、ここが今回のお店、オルフェというバー。
角を曲がった瞬間から、賑やかを通り越したでかい笑い声が聞こえてくる。扉は空きっぱなしで、ちょっと覗いてみると人がもっさり。こりゃはじめてはハードル高し。
とは言え、引き下がる理由も全くないので、早速入店。
入ると、テーブルが二つくらいで、カウンターが折れ曲がって7席。
やたらと人が溢れている店内は、人の上に人が座ると言う超絶展開に持ち込まれているほど込んでいる。なんと言うか部室で飲んでいる状態。そこはセンセイと意見が一致。
おや、店の一番奥で、手を振っている女性がいる。
基本的に目が悪く、普段ならかなり近づかないと認識できないのだけど、妙に見慣れているのかすぐにHと判明。
Hが「あ〜、センセ〜イ」っと言ってくれたが、俺の名前は呼んでくれなかったので、涙腺が緩んだことは内緒だ。
カウンターの席を譲って頂き、座ってみると、結構狭いのですが、なるほどなるほど不思議と落ち着く。個人でゆっくりも、友達とわいわいともできそうな、絶妙な距離感が出来ているのかもしれない。
H、センセイ、ハヤトの順に並んでハイボールを注文。どうやら本日は肉豆腐と、キノコ豚汁が有るらしい。肉豆腐をHから少し頂くと、濃いめの味付けで僕の大好きな味。手作りの料理というのがやはり嬉しい。
料理は多分日替りだと思いますが、ひっきりなしに肉豆腐の注文が入ると言う繁盛っぷり。そのうち牛丼なんて言葉も出てきてました。
色々お話を聞けば、お客さんはこの辺の飲み屋のオーナーだったり店長さんだったりの方が多く、1人で来ている方が多かったです。近所飲み屋のオーナーさん達がほっと一息つけたり、楽しく飲めたりする場所でも有るんでしょう。
なんて話しをしていたら、噂はしていないのに、鉄人こと「ようちゃん」が表れて、牛乳1杯のんで去って行くと言う無双っぷり。
お勘定はというと、ハイボール2杯×2人で、なんと2000円。お通し代無しの、一杯500円。明朗会計だぜ阿佐ヶ谷。今度は是非、料理の方も頂いてみようかと思う。
お店に入るのは正直最初はハードルが高いかも知れませんが、広くはないその店内が、お客さんや、お店の方々との距離が近いので、一度溶け込めばついついはまっちゃうお店でしょう。
なんか日記みたいになっちゃった。
(ハヤト)